炎はその身を焼けれども、せめて魂(こん)は空へと昇りて・・・な日




いつにも増して、憂鬱な朝。朝などこなければいいのに・・・。そうすれば、今、心に渦巻く黒いモヤモヤがばれないのに・・・。


それでも時は無情で、万人に朝を迎えさせます。
朝の5時半。軽く頭をかいて、目を擦りつつ下に降ります。そこで香(かおる)は線香の香り。ヒメの魂が天へと昇るのを助ける煙です。
ベッドの上で、タオルをかけられたモノ。すでに猫と言う温かみのある肉を持った動物ではなく、肉塊。タオルを顔の部分だけめくって、中から出てきたモノを軽く撫でる。


すでに暖かさなど無く、やわらかさもなく、ソレはそこにあるだけのもの。


ふと、周りを見る。
母が寝ていた。線香の香りが強く鼻につく。
どうやら、ずっと線香をつけていたようだ。(本当は3時前まで一緒にやっていたのだが、寝なさい。と言われ、しぶしぶ寝床に戻った)
ヒメと言うペットを失ったショックは、多分私よりも母の方が強いだろう。逝ってから、私が眠りにつくまでの殆どの時間を頬をぬらしていた。


線香に火をつける。
もう、涙は出なかった。



仕事中、上司は私が急に有給を取った理由を一度も聞かなかった。
前の馬鹿上司から変わって本当に良かったと思う。今度ぐらいは、飲みにでも付いて行ってあげようかな?と思った。


仕事が終わり、家に帰る。
あいかわらず線香の香りが家を支配している。
「あ、那波(仮名)」と母が呼び止めた。
「ヒメは、ちゃんと火葬してきてもらったからね。」
そう言い、軽く微笑む。まだどこか硬いけれど、とりあえず大丈夫だと判断する。


着替えてきて、ヒメが昨日「いた」部屋に行く。
そこには、今朝あった肉塊はすでになく、代わりに机の上に白い骨壷を入れたものが置いてあった。
線香をつけ、手を合わせる。


いままでありがとう。


そして、さようなら。
お別れの挨拶は、単純な方がいい。




そう、単純な方がいい。

over・・・



ヒメ、3歳。



Thanks 

>forおがりんさま
愛するものを失った気持ちと言うのは、ありとあらゆる人に共通の気持ちを起こさせるものだと思います。けれでも、それを乗り越えて生きていかなきゃいけないんですよね。奇麗事は嫌いですが、失ったモノが、自分に何を残してくれたかを考えながら生きていけば良いんだと思います。


>for暁様
突然のトラッシュバックでちょっと驚いてしまいました。お悔やみのお言葉、ありがとうございます。