散歩
お休みなので、気分転換に散歩に行く
家を出て、ひたすら歩く。
ひたすら歩く。
やがて海が見える場所まで出てきて、さらに海沿いに歩く。
海の公園に到着。自販でホットの午後の紅茶購入。ベンチに座り、足を休ませつつ、岩場の上から海を眺める。
数分後、首筋を流れた冷たい風で我に返る。
再び歩く。
誰かに呼ばれた気がして、ふと、空を見上げる。
すでに夕暮れの空。
空から自分を呼ぶものなんていないはず…。
視線を海に向ける。
ちょっとだけ、寄り道したくなった。
思い出の中に残っている、あの防波堤に……。
相変わらず潮風は冷たく、顔を強く打つ。
と、風の音が、彼女の…ヒメの鳴き声に聞こえた。
軽く目をつぶり、短く黙祷する。
あれからもう半年以上経つ。
いまだ、あの防波堤で弱弱しく鳴いた彼女の声が
耳に残っている。